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と医療規則の波に乗ってマネージドケア、ことにHMO(集団保険)やPPO(供給者優先組織)が急増して、国民の半数以上が加入しているので出来高払い保険は国民全体の12%くらいのみがこれに属するにすぎなくなった。また、米国の個人支払額は大半の保険が薬品代の支払いをしないので、全医療費の25%を占め、日本の13%の2倍である。
そのため、現在米国の医療は三層構造である。すなわち、?最も制限および規制の強い困窮者層と、?次第に制限医療と医療規制が強く、医師医療機関の選択権に制限のあるマネージメントケア、そして最後は?伝統的な出来高払い保険および個人負担の多い富裕階級や知識層で、世界最高といわれる先端医療の恩恵を自由に受けられる人々に分けられるので、医療の不平等が顕著である。

 

医療保険システムの課題

日本は医療費が最近までの高度経済成長により国民総生産費に対する割合が米国の半分にすぎないのと、国民皆保険であるために国民の95%までは比較的進んだ医療を何の制限も受けずに受領できるという、実に世界でも類のない状態にある。
しかし、人口老齢化とハイテク医療の導入によりやがてはある程度の制限医療や医療規制が必要となることは必然であり、すでに一括支払い等の制限支払い機構が導入され始めているし、同輩監視機構(PRO)が検討されている。
そのため患者のアメニティを維持し、また先端高額医療施行には私的保険の導入あるいは患者負担費の増加が必要となり、富裕階級のみがその特権を享受する可能性もある。すなわち基本医療は公的保険により、患者のアメニティと先端医療は私的保険または私的支払いという二層構造になる可能性は大きい。
ここで問題なのは、医師会が基本医療の程度を決定するのか、米国のように政府または第三機関に決定権があるのかということで、医療監視機構。が医師の自主規制によるのか政府主導の下に行われるのかという課題とともに、日本医療の将来と国民のQOLにとり重要である。

 

日本医療の問題点

日本の医療が国民のQOLの向上に貢献している一つの特徴は、健康診断等の予防医療および予防ワクチンの施行率が米国に対してはるかに高いことである。米国においては外来患者は軽症では医師を訪れないので、外来訪問率は日本の6.4%に対して米国は4%にすぎないが、入院率は日本の6.4%に対して17%と3倍に近い。すなわち、米国では予防医療どころか早期治療も行われていないのであるが、逆に日本では診療費の個人負担が少ないので患者の訪問が多く、医師が出来高払いてあるから患者を不必要に引っ張るので診療患者数が多い。患者にとっても3時間待って3分診療という状態が見られる。また、入院日数も平均23日で米国の5.4日に比して4倍に近く、不必要入院および社会的入院が多いのが特徴である。
病院の入院費は米国は日本の数倍であるにしても、通常は2人部屋で、6人、8人部屋等は集中治療室以外にはほとんどなく、個室以外は超過料金を収集していない。日本の病院はプライバシーがなく、患者のQOL、アメニティの上からは今後改善を必要とする。さらに末期や重症患者に対する患者中心の医療推進が要望される。
老健施設で大部屋に群っている入居者は、開発途上国の病院を想像され、一等国としての面目がない。また在宅ケアに対する介護も推進して、介護者のQ0Lおよびアメニティの改善に努力すべきである。
最後に、日本のホスピスケアはキリスト教による宗教的背景が少ないので運営が困難であることは十分理解されるが、末期がん患者に対する疼痛除去と精神安定に対しての医療者の責任と義務を感じるべきであり、ホスピスケアの確立は日本の医療にとって大きな課題である。

 

 

 

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